階段を折り返して見えなくなるまで、見ていた。 姿が見えなくなっても。余韻を見ていた。

 図書室は1階だから、昇降口はすぐ。薄暗い窓の外。薄暗い廊下。

 あたし。
 もっと知りたいと思い始めてる。彼を、冬海をもっと知りたいと。

 瞳を知ったら、それに映っていたいと思う。瞬きするところを見ていたいと思う。声を知ったら、名前を呼ばれたいと思う。

 触れられたら、触りたいと、思う。

 あたしの中で、意志とは関係ない深いところで。それはちりちりと、少しずつ少しずつ焼け始めている。

 廊下の、すごく向こう側の蛍光灯が、タマ切れなのかチカッ、チカと点滅していた。