昼休み終了のベルが鳴った。
休み時間の終りが近かったからか、あたしがここに来た時にはすでに人影が無かった。
ばたばたばたっ!
足音がしたから振り向くと、鞄を抱えて廊下を子犬のように走ってくる冬海だった。
何日ぶりなんだろう、会うの。
「センパイ! 早く出ようっ俺は見つかったらヤバい」
「あーもう!」
あたしの手を掴んで冬海はそのまま走り出した。手が。冬海の手が温かい。
正門じゃなく裏に回ると急な階段があって、そこまで2人で走った。
雨上がりの空だった。繋いだ手に汗が滲む。
「もう、いいか! はー焦った!」
あたしの手を離し、呼吸を整える冬海。病み上がりで急に走って、あたしもかなり息があがっている。でも、調子は悪くない。
逆に体を動かして清々しいくらいだった。おかしいけど。
「ちょっと、いいの? 出てきちゃって」
「いいって。心配無いって」
良いわけ無いんだろうけど。
言っても教室に戻らないだろうから、あたしはそれ以上言わなかった。屈託のない冬海の笑顔に、何も言えなくなってしまったから。



