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授業も耳にあまり入ってこなくて、気付けば休み時間、という感じ。
なんとなく、今朝は1本早い電車で学校に来た。避けている自覚は無かったけど、やっぱり会えない。
死ぬほど会いたいけど、会えない。どんな顔をして良いのか分からなかったから。
梓と美由樹が心配して「具合悪いなら言ってくれればいいのにー」って言ってくれた。目の前で倒れられてびっくりしただろうな。
「前にまっすぐ倒れていってさ、びっくりしちゃった」
美由樹が、あたしが倒れた時の状況を細かく話してくれた。
う、嬉しくないけど。ありがとう……。
「ああ、聞いたかもしんないけど、冬海くん来たよ昨日」
……そうだったね。それを思い出した瞬間、クラスの女子の視線が気になる。別に見てないけど。
他のクラスや学年に彼氏や彼女が居る子は他にも……。「美由樹いないと思ったら、園沢少年と喋ってんの」と梓が言った。
「うん、電話来た」
「でも、余計なことは言わなかったよ。保健室に生徒会長が居たってことは」
……それもあった。
「なんか、中尾先輩すごい「俺が居るからあとはもう帰れ」って感じで怖くてさぁ。晃、襲われなかった?」
「あーうん。まぁ大丈夫だったけど」
襲われはしなかったけど……事態はけっこう深刻だということを、2人は知らない。
「保健室に先生と一緒に晃を運んで行ったら、中に居て。まぁ、会長だしなって先生も納得しちゃって」
「あれ、サボってたんでしょ」
「ねー」
梓と美由樹が頷きあっている。
ああもう、頭が痛い。今日は早く帰ろうかなぁ。むしろもう帰って寝てしまおうか。また風邪がぶり返したら困るし。
「頭、痛いの?」
美由樹に聞かれた。頭を押さえていたから。
「ううん、大丈夫」
大丈夫。体は、ね。



