美由樹……。きっと教室を覗きこむ冬海の顔を見て動物的速さで駆け寄って行ったに違いない。きっとそうだ。
「寝てた? 熱下がったの?」
冬海は、矢継ぎ早に質問してくる。
「熱は昨日でほとんど下がってるから大丈夫。念のため今日も休んだんだ」
そうか、と冬海の声。それの後ろからまたガヤガヤと聞こえてくる。
「ごめん、俺なにも知らなくて。倒れたとか……メールすれば良かった」
「大丈夫だって。倒れたって言っても、転んだようなもんだし」
倒れた瞬間のことなんか覚えてないけど。あと、中尾先輩とのことが頭をよぎったけど、気付かなかったことにした。
「帰り、センパイんち行こうかな」
「え!」
「だって心配だし、俺センパイんち知ってるし」
何を言い出すんだ。「ええ、夕方? 何時くらい? マジで?」とか言いながら、瞬間で考えて。
来るの? 今日帰りに? お母さんに何て言うの!
「うそーん」
「ああなによ!」
からかってんなコンニャロウ。
「あはは。センパイ元気みたいだからちょっと安心した」



