「ここ保健室。幸田さん体育で倒れたんだよ。覚えてる?」

 倒れた……あまりよく覚えてはいないけど……。でも、なんで?

「なんで、中尾先輩が……?」

 ぼーっとする頭で聞く。そうだよ、なんであたしが体育で倒れたって、中尾先輩が居るの?

「俺も、ここに居たから」

 ニヤリと笑って、指で下を指した。保健室に中尾先輩も居たの?

「友達達が付き添ってたんだけど、授業もあるだろうし、俺が居るから戻ってもらった」

 先輩は軽い感じで喋っている。たぶん、友達って梓と美由樹のことだろう。いま、何時くらいなんだろう?

「気分、どう?」

 制服のネクタイをいじりながら、中尾先輩が言う。ベッドの横にパイプ椅子があって、それに座りなおす。

「今日ずっと熱っぽかったから……でも具合悪くはない……です」

 最後は声が枯れてしまう。ふふっと、中尾先輩が笑った。安心したようなため息と一緒に。