昼休みは、食欲が全く無くて、持ってきたおにぎりを一口しか食べられなかった。


「大丈夫? ちょっと顔赤くない?」

 美由樹が「ヨーグルト食べる?」と寄越したけど、首を振って断った。

 何も食べたくない。喉が渇いていた。



 午後の授業は体育で、外が雨だったから、体育館で行われた。

「整列してー! 3週ランニング!」

 紺色のジャージ姿の先生が、生徒に号令をかける。自分もジャージだった。

 のろのろと走り出す生徒達。あたしも重い足を引きずって、走り出した。

 冬海はいま、何をしてるんだろうか。

 また学校を休んでいるんだろうか。もしかして。そうかもしれない。


 あの白い車に乗って、ホテルへ連れて行かれてるかもしれない。

 ホテルに、入って。1時間か2時間か。

 どれくらいなのか分からないけど、部屋に、誰かが居て、そして。あたし、は……。



「と、う……み……」


 目の前の真っ黒な景色。ここは、どこなの。

「きゃあ! アキ!」

 ドスン。

 鈍い音と、火花のようなもの。美由樹の声が、遠くなる意識の中で聞こえたような気がした。体がだるいよ。


 左の肩に、痛みが走ったけど、あたしは起き上がれなかった。




 ***