「お前、もうこのへん来ないほうがいいぞ。ああいう変なのに捕まって当たり前だ」

「あ……うん」

「どっか行くんだったのか?」

 心配そうというかちょっと怒ってるみたいな友哉。友哉が通りかかってくれなかったら、本当に危なかったかもしれない。

「うんちょっと……人、追いかけて来たらこんなとこ来ちゃって……」

「……ふーん」

 全部を友哉に言うわけにもいかない。元彼だって、冬海と関係無いし。こんな所であたしに会って、友哉もびっくりしているに違いないけど。

「もう、行くんじゃねーよあんな所」

「うん……」

「友達だってなんだって、もう行くな」

 なんかちょっと、怒ってる。
 車が良く通る所まで出てきて「あっち抜ければ駅前の通りだから。あと分かると思うけど」と友哉が言う。

「じゃあ、ありがとう」

「おう」


 キャスケットをかぶろうとした。「アキラ」と呼ばれる。少しだけ心臓がぎゅっとなる。

「高校で彼氏、できた?」


 何を急に……。


 あたしは友哉を見る

 。強い眼差しは変わってなくて、男っぽくなったというか、大人っぽくなっていた。

 制服の白いシャツが、とても似合っていない。


「……うん。友哉は?」

 友哉は視線を落とす。「俺はまぁ」とだけ言った。

 モテるからね、またきっと、女の子がたくさん居るんだろう。

 鞄を持つ友哉の手は、大きかった。


「じゃあね」


 あたしはキャスケットをかぶりなおして、髪の毛を手で梳いて、歩き出した。