月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「あのさ」

 小声で、あたしのそばまで降りてくる。

「先輩に、言ってみたんだ。あの、ジャージとかバックとかのこと……部活でも色々されてたから」

「え……で? 大丈夫なの?」

 急に光からその話をされたから、なんだかなんて言葉を返したらいいか分からなかった。先輩に、彼氏に相談したのか。
 色々されてたって、なんなの本当に部活のやつら。かなり腹が立つ。光に何したんだ。

「先輩すごい怒って、それで」

 光はうつむいて、でもなんか嬉しそうに照れたような顔をしていた。

「守って、やるから、心配すんなって」

「わぁ」

 光が何をされていたのか分からないし、とても心配なんだけど、光の彼氏がそう言ってくれたなら、とても安心だなって思った。このままエスカレートしないでおさまって欲しいから。

 普通の学校生活と部活をして欲しいから。

「まだ、完全に安心はできないけど……今日は部活でなにも無かったよ。普通だった」

「守ってやるからって、安心っていうか、あたしとしては安心だけど、先輩すごいなぁ」

 最近の中学生は大人だなーなんて。あたしも高校生だけど、そんなこと言えないかも。

「うん……あたし、それだけで十分だ」

 光は、嬉しそうに微笑んだ。

 光の彼氏には、もちろんガッチリ守って欲しいけど、あたしだって姉として、何かあれば出動する。

「あたしも居るから。またダメそうだったら、辞めればいいと思うよ部活」

「うん」

 少しだけ不安を混ぜた微笑みで、光は部屋へ入っていった。簡単に辞めろって言うけど、好きでやってるバレーだ。そう簡単にはいかないとは思う。