月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 疑問ばかりで脳内がいっぱいになってパンクしそうなまま、次に来た電車に乗り込み、疑問は解決しないまま、いつの間にか、家に着いた。もうあたりは暗くなっている。

 重苦しい空気が体を包んでいる感じがして、玄関のドアをなかなか開けられないでいた。

「お姉ちゃん?」

 後ろから呼ばれて振り向く。光だった。

「あ……お帰り。部活?」

「うん。入らないの? なにしてんの」

 光はスポーツバッグを担いだまま、玄関のドアを勢いよく開けた。

「ただいまー」

「ただいま」

 光に続いて、あたしも家に入る。料理の良い匂いがしていた。メニューはなんだろう?

「おかえり。珍しいね2人一緒になんて」

 お母さんが顔を出した。お父さんはいつものようにまだ帰ってきていないらしい。

「ちょうど今、会ったの」

 ジャージ姿だった光は「着替えてくる」と言って、部屋へ行こうとした。あたしも着替えてこよう。ご飯……なんか食欲無いなぁ。

「あ、お姉ちゃん」

 階段の途中で光が立ち止まる。

「あのさ」

 小声で、あたしのそばまで降りてくる。