よく中が見えない。後部座席はスモークが貼られているし。あの時、運転していたのは40代くらいの女の人。冬海のお母さんかと思っていたけど、両親は亡くなって居ないと言っていた。

 じゃあ、あれは誰? いま運転してるのも、あの女の人なの?

 当たり前のように、車のドアが開き、冬海は乗り込んだ。運転席に居るのがどんな人なのか、遠すぎるのと角度的に見えない。

「冬海……」

 思わず名前が口から出てしまう。
 お弁当を買いに行くんじゃないの? 用事って、その車に乗って、どこに行くの? 何しに行くの? 運転しているのはあの女の人なの? その人は誰なの? 親戚? 友達?


 疑問が渦巻く。

「まもなく、列車が参ります」

 また駅のアナウンス。

 もうすぐ、冬海が帰る方面の電車が来るよ。乗らないの? 家に帰らないの? どこに行くの?

 あたしは、反射的に上ってきた階段を1つ飛ばしで駆け下りた。自動改札まで走る。出ようと思って、パスケースをまた出す間に、駅の入口の前を、あの白いセダンが通り過ぎて行った。

「冬海!」