なんかこう、変だなって思うことが、何度かあったような気がする。
おかしいよね、何か隠してるよね。あたしに知られちゃマズイようなこと。
……隠してるよね?
階段の途中まで行ったら、もうすぐ電車が来るアナウンスが聞こえた。あたしはそのまま立ち止まる。もう冬海は駅から出ただろうか。階段でじっと立っていた。
車掌の笛の合図が聞こえる。そのまま電車のドアは閉まり、ゆっくりと走り出した。完全に行ってしまうまで、あたしは階段に居た。聞こえるのは自分の呼吸音。
電車が行ってしまってから、階段を上りきると、空っぽのホーム。
ホームからは駅前のロータリーが見下ろせる。コソコソとコンクリート壁の隙間から、下に広がるロータリーを見てみた。壁は雨で湿っていた。
しばらく視線を動かしてあちこち見ていると、うちの学校の男子生徒の制服が見えた。後姿だったけど、冬海だと分かる。ゆっくりロータリーの歩道を移動して、そして立ち止まり、ケータイを取り出したようだった。どこかにかけている。夕食のお弁当を買うならコンビニか駅前のスーパーで、帰るならどっちみち電車に乗るはず。
電話を終えた様子で、ポケットに手を突っ込んで佇む冬海。なんだか覗きをしているようで、趣味が悪いなって自分で思った。心臓がゆっくり、でも大きく打っている。
どれくらい経っただろう。時間にすれば数分だったはずだけど、タクシーが3台ほど並ぶロータリーに1台の車が入ってきた。
夕方のラッシュ時だったけど、たくさん車が走っているのは大通りで、ロータリーは客待ちのタクシーしか居なかった。その車の方を向いた冬海が足を一歩踏み出した。動くのだろうか。入ってきたのは、白いセダン。冬海の前で停まる。あれはいつか見た……。
おかしいよね、何か隠してるよね。あたしに知られちゃマズイようなこと。
……隠してるよね?
階段の途中まで行ったら、もうすぐ電車が来るアナウンスが聞こえた。あたしはそのまま立ち止まる。もう冬海は駅から出ただろうか。階段でじっと立っていた。
車掌の笛の合図が聞こえる。そのまま電車のドアは閉まり、ゆっくりと走り出した。完全に行ってしまうまで、あたしは階段に居た。聞こえるのは自分の呼吸音。
電車が行ってしまってから、階段を上りきると、空っぽのホーム。
ホームからは駅前のロータリーが見下ろせる。コソコソとコンクリート壁の隙間から、下に広がるロータリーを見てみた。壁は雨で湿っていた。
しばらく視線を動かしてあちこち見ていると、うちの学校の男子生徒の制服が見えた。後姿だったけど、冬海だと分かる。ゆっくりロータリーの歩道を移動して、そして立ち止まり、ケータイを取り出したようだった。どこかにかけている。夕食のお弁当を買うならコンビニか駅前のスーパーで、帰るならどっちみち電車に乗るはず。
電話を終えた様子で、ポケットに手を突っ込んで佇む冬海。なんだか覗きをしているようで、趣味が悪いなって自分で思った。心臓がゆっくり、でも大きく打っている。
どれくらい経っただろう。時間にすれば数分だったはずだけど、タクシーが3台ほど並ぶロータリーに1台の車が入ってきた。
夕方のラッシュ時だったけど、たくさん車が走っているのは大通りで、ロータリーは客待ちのタクシーしか居なかった。その車の方を向いた冬海が足を一歩踏み出した。動くのだろうか。入ってきたのは、白いセダン。冬海の前で停まる。あれはいつか見た……。



