駅に着くと、冬海は改札まで来て「俺、ここで」と言った。

「え、帰るんじゃないの?」

「ばーちゃんが、帰りに晩メシの弁当買ってこいって言ってたから……」

 おばあちゃん? なんだかよく分からない。さっき用事があるからって言ってたじゃない。

「買い物するなら手伝うけど」

「いや、大丈夫。ほら、電車来るだろ」

「……そう」

 なんだか。

 こういうのを不審な行動って言うんだ。思い返せば、何回かあった。「思い返せば」って考えになるっていうのも、芋づるなんだけど。後から思えば、そういえばって。

 なんだろう、おかしいな。なんか、隠してる……よね? 詮索をしてはいけない空気。詮索して、何かを知ったら自分が傷つくんじゃないかと思う空気。

「じゃあ……行くよ。明日ね」

「朝、ここ居るから」

「うん」

 突っ込んで聞けなかった。
 冬海の整った顔は整った笑顔を作り上げる。それはあたしに向けられていて、涙が出そうなほど愛おしい。

「バイバイ」

 冬海に手を振って、ホームへの階段を上る。
 この間は、学校を休んでいた。無断欠席? 冬海のクラスメイトも知らない様子だったし、あたしも何も言われない。