月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「あのさ光。あのジャージとかのことね、これから先、もっとエスカレートするようなら、考えた方がいいと思う」

 考えた方が良い、その考えっていうのがあたしにはまとまってなかったんだけど。今でもじゅうぶん酷いと思うけど、もっともっと酷くなる前に。

「……うん」

 光のことをいじめてる奴らが、くだらないバカなことをしている恥ずかしい人間だって、気付いてくれればいい。あとは光をいじめるのに飽きるとか。理由なんかどうでもいいから、離れていって欲しい。

「お姉ちゃん、もう寝る?」

「あーうん、寝ようかって思ってた」

 光は話をしたいのだろうか。それならつき合うまで。


「……一緒に、寝てもいい?」

 ちょっとビックリした。意外なことを言い出したから。ベッドはシングル。2人で寝るのは狭いかもしれないけど、あたしは壁側に寄って、光のスペースを空けた。もこもこと入ってきた光は、体を精一杯小さくしている様。

「もう、あんなことしないよ」

 痛かったのか、怖かったのか。カミソリを持った時の気持ちは想像でしかないけど、光がそう言ったことを信じたいと思う。

「部活……辛かったら辞めればいいんじゃない?」

 バレー部に居られないくらいなら、いっそのこと。

「そう簡単な事じゃないかもしんないけど……」

「うん……」

 光の返事は弱々しい。
 誰にどうやって助けを求めていいのか分からないと思う。もしあたしが光の立場だったら……?