月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 ご機嫌で帰ってきたお母さん達が買ってきてくれたお土産は、ケーキとクッキー。

 光には夕食を食べさせたけど、あたしは食べなかったから、クッキーだけ食べた。光は「太るから明日にする」って、珍しく食べなくて、お母さんは「珍しい、恋煩いかしら」と微妙に的を射ているようなことを言う。

 あたしはとても疲れてしまっていたので、もう寝てしまおうと、部屋に行った。光はとっくに自分の部屋に行っている。

 コンサートの話をしたいらしいお母さんとお父さんをリビングに残し「頭が痛いから寝る」って言って、部屋に向かった。風邪なのか生理痛なのかとか言っているお母さんの声が聞こえたけど、それには答えずに階段を上る。


「はぁ」

 部屋に入ると、自然とため息が出てしまった。昼過ぎまで寝ていたくせに、そのあと昼寝もしたくせに、なんだかもう眠い。

 明日は普通に学校があるし、もう寝てしまって、朝にシャワーを浴びて学校に行こう。今朝(というか昼)に起きてきた格好のままだったから、脱がないでそのままベッドへ倒れこんだ。

 光の「もうしないから」っていう言葉を思い出す。信用はするけど、心配。死ねるほどの傷じゃなかったけど、死んでしまおうって思って、カミソリで自分に傷を付けたのは事実。

 怖くて震えてくるけど、光が死にたいほどのことをされていたことを考えると、怖さよりやっぱり怒りだ。光の彼氏が守ってくれれば良いんだけど……。

 眠いはずなのに思考はグルグルと回り、体が重いけど頭の芯がハッキリしている感じ。