月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 光は落ち着くと「お風呂場、洗ってくる」と立って行った。そんなに汚れていないはずだったなと思い出しながら、一緒にバスルームに向かった。冬海も一緒に来た。

 3人で浴槽に水をかけたり、血の付いたタオルを抱えたりして、後片付け……ていうのは変だけど。

 光の腕を押さえていたタオルは、まさか洗濯機に入れるわけにもいかなくて、どうしようかと血の付いた所を見ながら、悩んでいた。

「俺、帰りに捨てるよ」

「捨てるってどこに……」

「ビニールにでも入れて、駅とかコンビニのゴミ箱とか」

「え……」

 結構大胆な事するなぁ。

「誰も気にしないって」

 そう言って冬海はあたしからタオルを取る。

 お母さんが買い物したあとに、ビニール袋を畳んで入れているところはどこだったか思い出す。冬海に渡さないと。タオルを入れないと。

「大丈夫? 俺そろそろ帰るから」

「あ、うん……ごめん。ありがとう……」

 そうか、冬海は帰らないといけない。このまま居るわけには。そろそろ両親も帰ってくるだろう。

「もう、大丈夫だといいけど。光ちゃん」

「うん……」

 それは光自身しか分からないから、あたし達は見守ることしかできない。