「あれ、センパイ来てたし」
「ぎゃあ!」
背後から声が聞こえた。全力で振り向くと、そこに居たのは冬海だった。
「え、居たの!」
「あーうん……」
目を擦っているということは、寝ていたんだな……。あたしが座っている席の2列離れたところに、椅子の上に横になっていたらしい。
「午後、ここにずっと居たんだよね。眠さ限界だったから」
ふわぁ、とあくびをしている。よくそんな所で寝れるなぁ。なんか本当は風邪が治ってないのかなぁ。大丈夫かしら。
「良かったねぇ、誰も来なくて……先生とか」
起き上がって背伸びをする冬海。髪の毛が少し乱れている。寝癖? 寝癖つくほど寝てたのか。
「あ~うん、でもさっき人が来て起こされたけど」
さっきって、あの女の子。
「ああ、入口でぶつかりそうになって」
「うちのクラスの女子」
あ、1年だったんだ。分からなかった。
「授業サボってるのバレて呼びに来たんじゃないの?」
「うんまぁ、それもだけど」
可愛らしい子だった。冬海のクラスの子なんだ。
「あと、告白されちった」
は?
「え? こ」
「告白。好きです、だって」
おお! なにそれさらっと言ったけど女子から告白だと!
「え! え! それで!」
「それでって……それだけだったけど」
「それだけ……」
「うん」
まじか。それだけって、だって告白されたんでしょ! なにその冷静沈着っぷり。朝の挨拶じゃないんだから!
「と、冬海くんが居ないから誰か探しに行って来いって言われて、きっとあの子、あたしが行ってくるとかなんとか言って立候補したんだきっと! 下駄箱に行って見たら外靴があるから、まだ帰ってないって思って、じゃあどっかでサボってるんだ、保健室行ってみたけど居なくて、あと人気の無いところ、図書室じゃん! って入ったらまんまと居て、呼びに来たはいいものの、これ二人っきりだよどうする、寝てるけど起こして、まじこれチャンスじゃね、起してあと告白するしか……!」
「ちょっと待てい」
ストップ、と手のひらをあたしに向ける冬海。笑いをこらえている。
「妄想たくましいけど、どこも合ってないみたいだから。……クックッ」
……恥ずかしい。思わず妄想が暴走した。



