月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「あとで聞かせてね」

「何を」

 梓が肘で突いてきた。美由紀が「がんばってね」と言う。何をがんばるのよー! 冷やかすんだもんなーまったく。あたしも鞄にノートと教科書を詰め込んだ。

「もうキスした?」

 美由紀があたしの耳元に顔を近づけて言ってきた。教えるか! したけど!

 じゃあねー明日ねーと言い合って、2人と別れた。あたしは手を振って廊下を歩き出す。特にする事が無いし、もう図書室に向かっちゃおうかな。先に行って、本でも読んでいよう。

 図書室へ向かっている途中、部活へ向かう生徒や掃除用具を持って一生懸命やってる生徒、ワイワイ騒いでいる生徒、「サボっかぁ」とか言ってる靴のかかとを踏んだ男子集団、香水の匂いがする女子集団とか、いろんな生徒達。たくさんすれ違った。それそれがそれぞれに、自分のことや友達のこととか色々ね、がんばってるんだよなって。勝手な想像だけど。