月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

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 本日も1日お疲れ様でした。授業終了の浮き足だった感じと、掃除当番のせっかちさとが入り乱れる放課後に移る時間。鞄にノートとかを放り込んでいる梓に近寄って、あたしは言った。

「ごめん、今日はねあたし放課後……」

「あ、いいよあたしもすぐ帰るし」

 何も言ってないですけども! 梓はニヤっと笑って「いいなー」と肘で突いてきた。

「ちょっと、何も言ってないけど」

「みなまで言うな! あーそうだみなまで言うな」

 なんかちょっとオッサンみたいだよ梓その言い方。

「いやほんと、あたし昨日録画したやつ観たいんだ。だからすぐ帰るんだー」

 昨日、なんかやってたんだっけ? あたしケータイが気になってそれどころじゃなかったからなぁ。すぐ部屋に行っちゃったし、記憶にない。

「ああ、もしかしてぇ~あのドキュメント?」

「そう! 大捜査24時」

 いつのまにか美由樹がそばに来ていた。話を聞いていたみたい。大捜査24時ね……警察モノ。梓が好きそうだ。

「アキラも梓も帰るなら、あたしも大人しく帰ろうっと」

 もう荷物を詰め込んだのだろう、鞄をぎゅっと抱きしめて美由樹が言った。ピンクのキラキラチャームが揺れた。