月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 登校するときは坂道を登る。もっと、学校が駅から遠かったらいいのに。

 校門を通り、昇降口へ。駅から吐き出された生徒達は学校へと吸い込まれていく。

「じゃあねセンパイ。あと放課後」

「あ、うん」

 余韻も無く、くるりと冬海は自分の教室へと向かって行ってしまった。べつにこう、抱き合って別れを惜しむとかじゃなくてもいいけどさ、授業で離れて寂しいねくらい無いのかしら。無いのか!

 ……無いか。大人しく放課後まで授業を受けよう。

 授業中にケータイが鳴ったら没収されちゃうから、バイブだって聞こえるから、サイレントにした。休み時間に見ればいい。
 担任が入ってきて、出席を取る朝のソワソワと慌ただしい時間。頬杖を突いて何も書かれていない黒板をボンヤリ見る。

 早く、放課後にならないかな……。