月光レプリカ -不完全な、ふたつの-


「もう大丈夫なの? なんだったら先生に言って早退したら?」

「センパイも一緒に早退するべ」

 はぁ、それもいいかなぁ。適当に真面目だけど適当に不真面目で行こうかしら。

「放課後、図書室行こうか」

 あたしは誘ってみた。誰にも邪魔されないで居れるじゃない? って言えないけど。

「えー図書室って。うん……まぁ。いいか」

 なんか気乗りしなさそうだけど。
 この間みたいに、突然雨が降り出しそうな朝の空。1日どんよりなんだろうか。あ、傘持ってくるの忘れた。

「昨日、メールしなくてごめん」

 うつむいて冬海が言う。メールは届いてたんだな。

「いいよ。昨日は遅くまで返事待ってて、おかげで寝坊しちゃったけど」

 彼の口が「あ」の形で止まった。

「あーだからいつもの電車じゃねーのか! ごめーん」

「いいって。そのうちシェイク奢ってね」

「全種類な、奢るわ」

 へへんと冬海が笑って、あたしたちは学校へ歩き出す。

 シェイク全種類って何種類だろう?
 待っててくれたんだね。いつもの時間に来てあたしがホームから降りてくるのをずっと。それを思ったら、胸が切なくなったよ。