月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 そうこうしているうちに学校最寄駅に電車が到着した。降りなくちゃ。

 同じ制服の生徒が男女入り乱れて電車から吐き出される。この電車じゃないと遅刻するので、みんな乗るんだ。混み合うからあたしは避けてるんだけど。

 冬海も「あの時間の電車混むからさー」って一本早いので行ってたから、朝の待ち合わせができてたんだ。

 今朝は1人。つまんない。

 改札を出ると、同じ制服の大勢が同じ方向へ曲がっていく。ああ、また今日も1日学校か。当たり前だけど。逆方向へ曲がって行っちゃおうかなーなんて思ったりするけど。まぁ普通に学校に行きますけど。

 パスケースを鞄に仕舞った時だった。「センパイ!」そう声が聞こえた。ああ、なんでしょうか。「センパイ」なんて呼ばれてる生徒が何人居ると思ってんの。ピクっと反応してしまった自分が恥ずかしい。

「センパイ」

 部活のセンパイでも呼んでるんでしょう。男子が。冬海によく似た声の男子が。

「センパイってば」

 後ろから腕を掴まれた。え、センパイってあたし?

「シカトお?」

「と、冬海!」