月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 もうすぐ教室だというところで、3人の男子生徒が角を曲がってきた。青いネクタイ、一年生だ。3人のうち一人があたしを見る。目が合った。

「あ、あー……」

 あたしよりも背の低い男子だった。でもどこかやんちゃそうで。元気って感じ。声をかけているんだかなんだか分からないような。反応に困る。

「?」

「冬海の、彼女……センパイ」

 え、この人たち冬海の友達?

「え、あ、ほんとだ」

 一緒に居る生徒が言う。なんで知ってんだ。

「あ、あの。ええと」

 なんて言っていいのか分からず、そんな風に言ってしまう。別に用事があるわけじゃないんでしょうけど。たまたま廊下で会ったから……。

「あの、彼女センパイ」

 なんなのその彼女センパイって! なんで知ってんの。ていうかやっぱつき合ってんのか。で、君たちそれを知ってるのかよ。冬海から聞いたのかな?

「ハハハイ」

 動揺して変な声出しちゃった。「なんか」何言われるんだろう。「なんかブサイクっすね」とか? 

「今日、冬海ガッコ休んだんすよね。メールしてみたけど返事無いし。なんか知らないっすか?」

「え? 休んでるの?」

 あたしの反応を見て、3人は顔を見合わせた。意外そうな顔をして。

「なんだ、彼女センパイも知らないんすか」

「あたしも、メール来なくて……」

 冬海、今日休んだんだ。どうしたんだろう。休みだって知らなかった。

「どーしたのかなーって思ってたんす。知らないならイイッス」

「あ……ごめんね」

 イイッス、って言いながら3人は行ってしまった。言葉遣いはチャラい感じだけど悪く無さそうな感じはする。「知らないって」「なんだろなー」とか言いながら。3人が行ってしまうと、さっきと同じく廊下に静けさが戻ってくる。