月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 今日は生徒会の会議だった。校内の清掃がどうだとか、風紀の乱れはどーたらこーたら。少し眠かったので半分くらい、いやもっと聞いてなかった。すみません。

 中尾先輩ももちろん来ていたけど、今日は話すチャンスが無かった。そう、ちゃんと断らなくちゃ。冬海とつき合ってるのに中尾先輩と、っていうのは無い。ちゃんと言わなくちゃ。

 生徒会室でのあの独特な雰囲気を思い出していた。セピア色の室内。話す人の声が音楽に聞こえる。まぁ会議だったらそれじゃダメだけど。ああいう何かを決める集まり、実は苦手。寝不足でもないのに、眠くなっちゃう。生徒会なんて向いてないよなぁ、会議苦手なのに。

「幸田、お前あれだな。1年の園沢と帰ったりしてんな。朝も見るぞ」

「あ、は」

「つき合うことになったら報告って言っただろ」

 うっそ。見てたわけ? 

「どどどどどこで……」

 吉永先生は、持っていた書類をコンコンとオデコに当てながらニヤニヤしている。

「駅とか。えと駅とか? ああ、駅でも見たな」

 ほぼ駅ですね、駅しか無いですね。ていうか駅なんですね。


 キスしたところを見られたのかと思った。もうちょっと前の話だけど。
 だってあれからキスしてくれない。あたしからしようか?わぁ晃さん大胆。
 照れるー! どうしようやばい思い出してニヤニヤする。

「なにバタついてんだ」

「あ、なんでもありません」

「まぁ心配すんな。ちゃんとうまいこと、アレしとくから」

 アレってなんなの。

「け、今朝は一緒じゃなかったですけど!」

「昨日一緒だったじゃねーか」

 揚げ足取りか。高校生相手に。大人げないよ先生大人げない。

「まぁそうムキになるな。仲良くしとけよ。園沢のこと、頼むぞ」

「頼むったって……」