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「おい幸田!」
「ぎゃあ」
生徒会室から出て廊下を歩きだした途端、背後から大声が。
「ぎゃあってなんだよ」
「よ、吉永……」
「呼び捨て?」
「……せんせい」
小説のページでいえばきっと紙の無駄遣いみたいな会話の余白がある。廊下でそんな会話をして、振り向いてビビった顔のあたしを見下ろしている吉永先生。ああそういえば、イメチェンしてナマハゲじゃなくなったんだっけ。でも声がデカイ。
「先生さぁ、そんな声で突然呼ばれたら彼女に嫌われちゃうよ?」
「あー言われんだよ、それ。はは」
はは、じゃない。じゃあ直してください。
「もう奥さんですねそう言えば。シンコーン!」
「とんがりコーンみたいに言うな。いいだろ、羨ましいだろ」
いい大人が、自分が新婚だからって高校生に向かって「羨ましいだろ」って。別に羨ましくはない。



