月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「家まで送るけど。俺別に遅くなっても平気だし」

「だって別方向じゃん。大丈夫だよそんなに心配しなくても」

「ふーん」

「冬海くんち、引っ越してきたのってどんなとこ?」

 聞くと冬海はペットボトルのフタを回しながら閉めた。そしてこっちを向く。

「あ、アパートだよ普通の。ばーちゃんと二人だし、昼間は俺、学校だし」

 どんなアパートなんだろう、どんな部屋にいるんだろう。おばあちゃん優しいと良いな。行くときは何かお菓子でも持っていかないといけないだろうし、何が好きなのか聞いておこう。

「今度ばーちゃんに紹介すっから。ばーちゃん団子好きだから買ってって機嫌取ろうぜ。あの串に刺さっててゴマとかあんことかみたらしのやつ」

 まるであたしの心の中の独り言を聞いていたみたいな事を冬海が言う。串のだんご……と、メモ。

「緊張すんねーおばあちゃんか」

「母さんの母親だから、俺と苗字違うんだけど」

 なんか、複雑だな。

「美味しいお団子屋、リサーチしよっかな。美由樹とか詳しそう」

「クラスのセンパイだっけ」

「うん」

 直接、梓と美由樹を紹介していなかった。なんか変な空気になるよね。あ、どーも、みたいな。あ、友達ですみたいな。

「話してたら団子食べたくなっちゃうねー」

「ね」

 だからその可愛い首かしげやめろ。斜め何度なんだよチクショウ。