休みの日、あたしはそれとなく友哉に聞いてみた。

「なんかね、他のクラスの女子と歩いてたとか、なんか……そういうこと聞いたんだけど」

 友哉の部屋。友哉のお母さんは出かけていて居なかった。ルームフレグランスが香っている。きっちり片付けている感じでは無く、シャツが床にあったり、ベルトがベッドの下に半分入っていたり。要するに乱雑。

「ええ? たまたま一緒だっただけだろー?」

 たまたま、一緒になるんだろうか。なんだかよく分からない。友哉のまわりの雰囲気みたいに、よく分からないけど不安になるような。

「……そう」

「何言われたって、いまアキラと一緒なんだから別にいいだろ」

 良いのか、良いのかも知れない。

「うん……」

 肩を抱く腕は力強く、心地良い。そのまま引き寄せられて、制服のボタンに手をかける友哉からは煙草の匂いがして、あたしはそれに少しだけ吐き気を覚えた。でも、気にはならなかった。

 天井は、白かった。

「あき、ら」

 そう、あの時は。それだけが全てだった。友哉だけが。良い子で過ごしてきて、特別な日々を過ごしてきたわけじゃなく、トラブルもなく普通で、そんな生活の中で友哉が現れた。つまらないあたしを、友哉は自分のものにしたがって、それにあたしはのめり込んでしまった。

 家の近くまで送ってくれる友哉の、背中が見えなくなるまで見送って、彼は自転車だったから、自転車のベルかき鳴らす意味不明の行動を、見送った。

 信じていようとは思った。