「うるへー。かまうなー」

 友哉がかばうような形で、そこまででクラスからの追求は無い。それは友哉がまとう雰囲気のせい。あたしの知る範囲では、ケンカをしただとかそういう事は無いんだけど、なんとなく「裏で何をしてるか分からない」雰囲気だったから。

 だから、なんていうかあたし達の事をみんな、腫れ物に触るみたいに見てた気がする。今思えば、の話だけど。

 初めて友哉の部屋へ入った時。初めてキスをされた事。あたしのファーストキスだった。キスだけじゃなく、セックスも友哉が初めてだった。それを知っても「初めては重い」とか言わず、大事にするから、みたいな事を言った様な気がする。なんだかあの時の事はいまでもハッキリ思い出せない。

 部屋に行ったから分かった事だけど、煙草を吸っていると知った。「だめじゃん」って注意したら「じゃあ辞める」って言って。でも結局辞めなかった。
 あたしを、言いくるめようとする出来事が多くなる。それは気付いていた。分かってた。

「そんなことどうでもいいから、遊び行こう」とか。「なに、俺がキライなの?」とか。

 どっちにも、うなずいてしまう女。それはあの頃のあたしだ。

「まさかの、友哉か」

「アキラ、ちょっと大丈夫なの? 遊ばれてない?」

 友達はそう言ってた。遊ばれてるかどうかは知らないけど、それに「遊ばれる」ってどういう事か分からなかったし。でも別に嫌な思いはしてないし、友哉は優しいし、おかしな事は無かった。だからその時は友達に「大丈夫」と言っていた。

 おかしいと、思ってなかった。なにが「おかしい」のか分からなかった。
 嫌なことほど、耳に入る。

「3組のイズミと歩いてた」
「カラオケにサチコ入るところを見た」

 イズミであったりサチコだったり、女の名前だっていうのが分かるだけで、知らないだったし、本当にイズミとかサチコっていう名前なのかは分からない。

 女、誰かあたしじゃない子と一緒だったっていう事。それだけは分かる。それだけ分かれば充分だけど。