「じゃあ、幸田さん」

 突然、自分の名前を呼ばれて、外に向けていた顔を正面に戻す。

「え」

「13ページ、読んで」

「あ、はい」

「生徒会忙しいでしょうけど、物思いにふけらないように」

 先生、回りくどい。よそ見してごめんなさい。梓と美由樹がニヤニヤしてこっちを見ていた。
 教科書を読み終わって席についても、ノートを取りながらずっと校庭をチラチラ見ていた。

 そこに、冬海が居たから。
 そこだけ、切り取ったようにあたしの中に入ってきたから。