月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「いいの? 電車」

 息を少し切らして、あたしは聞いた。結局、駅の向かいにあるコンビニの駐車場まで来てしまった。だって、ずんずん歩くんだもの。

「いいのって、センパイのせいだよ」

「ええ、あたし」

 ああまぁ、あたしか。

「電車乗ってないし。こっち走ってくるし」

「……ごめん」

「なんか言うことあった?」

「ああ、うーん……」

 なんだか予想外の展開で、あの時ホームで冬海を呼び止めて何をしようとしていたのか、思い出して顔面が熱くなった。

 脊髄反射で、あたしは告白をしようとしていたに違いない。好きだって言おうとしていた。自分でも分かる。すごい唐突な告白を。脊髄反射告白と名付けよう。

「なんか、でもさ。あの状況で何も感じない男って鈍感でしょ。俺は分かった」

「……? 何が?」

「たぶんね」

 いたずらっぽい目をした。長い睫毛は風を産みそう。

「センパイ、俺のこと好きなんでしょ?」

 は?

「……」

「たぶんだけど」

 コンビニの駐車場、端っこのほうで2人でしゃがんでいる。買物に来る車が停まったり、人がビニール袋を下げて出ていったりしている。
 駅前コンビニは忙しい。しかも夕食前だ。

「……たぶん、だけど。ええと」

 あたしは、冬海をガン見していた。そういう意識は無かったけれど

「センパイ? 違うの? 怒ったの?」

 顔の前で手をヒラヒラされた。

「あ、ううん。えーと違わない……」

「当たり」

 イエーイみたいなノリだけど。

 綺麗な顔してちょっと微笑んで、頬もちょっと赤くなっていて、冬海は、そうあたしに言った後、もっと真っ赤になって下を向いてしまった。

 ああ、いま夕方だし、オレンジ色が顔に映ってそう見えただけかも?