月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 何してんだあたし。降りちゃって、電車から降りちゃって。どうすんの?


 電車が行ってしまったホームに1人、そしてあたしは行った電車に乗っていないから無人のホームで目立っているわけで、冬海にだって見つかっているに違いない。

 おそるおそる、向かいのホームを見ると、冬海がビックリ顔でこちらを見ていた。口は半開きだった。

 あたしは、身をひるがえし階段を駆け下りて、冬海がいるホームへ向かった。地下道を通って登る階段に足をかけた時「なにやってんの」と頭の上から声がして、あたしは見上げる。

「冬海くん」

「センパイ、なにしてんの」

 冬海は焦ったような顔。 

 数段を昇れば、触ることができる。そこまで、昇ってしまえばいいんだ。

 こんなヘンテコな状況なのに、そんな事を考えるあたしもヘンテコだ。