月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 一緒に並んで歩いた。嬉しかった。

 きっとたまたま。たぶん、自分が帰ろうと思った時にたまたまあたしを見付けて、送ってくれたんだと思う。

 冬海はなにも言わなかったけど。


 夕暮れのホームに出ると、あたしは向かいのホームに冬海の姿を探す。冬海はこっちを見ていた。目があって、少し微笑んでいた。


 そっちのホームに行きたい。冬海の隣に行きたい。もっとそばに行きたい。

 欲望はあたしを埋め尽くそうと、制服の中にある体でグルグルと渦巻いている。


「まもなく、電車が参ります」


 この間と同じ、駅のアナウンス。あたしが泣いていた時と。


 レールとこすれて、大きな音を出しながら電車がホームへ入ってくる。ドアが開けば、夕方のラッシュ時だから、人々が乗り込んでいく。

 あたしも乗り込んだ。

 乗り込むと、冬海がこちらを見ていた。お腹の前で小さく手を振っている。まだ電車の時間じゃないのだ。