月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 教えてね、の「ね」の余韻の口元があたしの思考を停止させてしまったまま、駅に着いてしまった。

 ロータリーを渡って、2人で改札口。

 スイカ定期を付けると自動改札が「ピッ」と音をたてる。

「そっか。反対方面なんだった」

 独り言を言ったつもりだったけど、なにげに大きな声になってしまった。

「またホームで泣かないようにね」

「な、泣かないよ!」

「じゃ、またねセンパイ」

 ホームへ続く、通路手前の階段を上がっていく冬海。あたしは半分までそれを見送り、あとは自分が乗る電車が入ってくるホームへ向かった。