月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「……1人じゃないし。ばーちゃん居るから」

「おばあさん……」


 そっか。あたしはおばあちゃんもおじいちゃんも、あたしが幼い頃に死んでもう居ない。あたしも冬海も、家族を亡くしている。


「俺、ばーちゃん子だから」

「……なんかそれは、うん。想像通りかも」

「えーなにそれ」


 夕暮れに包まれた駅への道は、あたし達2人以外の人影は無い。 

「俺を育ててくれたの、ばーちゃんだもん。俺にはばーちゃん居るから」


 あたしは冬海の隣に居るけれど、隙間があって、何歩か近付かないと手にも触れない。


 触りたいと思っていた。その笑顔にもキレイな顔にも。

 女のあたしには無い、そのキレイなものたち。