月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 おばあさんと2人暮らしだっていうのは吉永先生に聞いたけれど、もしかしたら何かワケありで、離れて暮らしているお母さんと会う日だったのかも、だから車で迎に来てくれたとか考えた。

 でも極力余計な事は言わないように。


「いや、違うよ。親、死んで居ないんだ。今ばーちゃんと2人で住んでる」

「そ、そうなの……ごめん」


 しまった。言うんじゃなかった。



「別に大丈夫だよ。親って言っても俺、小さすぎて覚えてないし」

「……」


 なんだか、冬海の外見のせいなのか、なに不自由無く暮らしてきてるように見えてしまう。でもそれは偏見というもの。


 なかなかハードな生い立ちらしい。「お母さん」とか言わなきゃ良かった。