月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「やーカッコ良かったなぁ、大人のオトコって感じ」

 ウキウキしている美由樹を先頭に、あたし達は教室へ戻る。

「吉永っていいヤツだね。あんまり喋る機会が無かったけど、上から目線じゃないし」

 梓が言った。そっか、あたしは接する機会があるけど、梓と美由樹は「ナマハゲ吉永」でありムダに声がデカイ怖い先生だと思っていたのかもしれない。

「そっか、あたしは生活指導と生徒会でけっこう喋ってたけど。うん、話しやすい先生だと思う」

 関わるようになってから、見た目はあんなだけど、話しやすいし生徒の目線でいてくれる先生だなって思っていた。なんか、ただの声がデカイ先生じゃないって思われて、自分も嬉しくなった。

 あたしは続けて言う。

「なんていうか、近所のお兄ちゃんって感じ」

「そう、ソレソレ」

 アハハハと3人の笑い声が廊下にこだまする。

 先生。教師。良いかもしれない。学校っていう場所が好きだし、行事とか、みんなで作り上げる楽しさってイイと思ってる。

「晃、鼻の穴が膨らんでるよ」

「え」

「ナニ考えてんだ~? ええ?」

 梓がオッサンみたいに聞いてきた。