見えなくなるまで、あたしは立って見送っていた。見失わないように。

 勝手に動いた口から出たのは、心の声だって分かってる。分かってる。

 自分から近付きたいと思ったから。だからあんな事言ったんだ。


 泣くときに1人じゃないほうがいいなら、それなら冬海に側に居て欲しい。

 それが何の為の涙でも、冬海に側に居て欲しい。


 自分の心がそう声をあげるのをあたしは聞いたから。

 このまま、始まってしまっても良いと思ったから。



 もう冬海の背中は見えないのに、日が傾いてきた空の下、ずっと見ていた。


 ずっと、冬海の帰った方向を。ずっと。