最初は何の事を言われてるのか分からなかったけど、ああ、駅のホームでの事を言ってるのか。

「じゃあね」

「待って!」

 ニッと笑ってまた歩き出そうとする冬海に思わず声をあげてしまった。

「じゃあ……じゃあさ、また泣きたくなったら電話していい?」

 なんだか、今日の自分は頭よりも先に体が動くらしい。今度は口が動いた。誰か遠隔操作でもしてるのかしら。

「冬海くんに、電話していい?」

 きょとんとした顔で、あたしを見つめる冬海。

 見つめられて、嬉しさと恥ずかしさがごっちゃになっていて、もう倒れるかもしれない。

 すると冬海は、ふっと笑顔になって。

「いいよ、俺で良ければ」

 そう言って、今度こそ帰っていった。

 初めて会った花壇、椿の木があるこの場所にあたしは立ちつくす。