それから数日が過ぎた。


夫は仕事を終えて、病室に来た。


忙しいスケジュールの中で時間を見つけては会いに来てくれた。


夫は仕事のことを一切話さない。


私の話を聞いてくれた。


普段、何気ない会話の中でも、この瞬間が幸せのようにも感じた。


この日、病室から出るときに「しばらく、戻らない」と言った。


私は「わかった」と言った。













ある日、アカネが病室に来た。


ヨシトさんと部下は連れていない。




「ナナミ、元気」


「うん」


アカネはお見舞いのために果物の詰め合わせを持って来てくれた。


椅子に座り、果物を切り分けて、皿に盛り合わせた。




「最近はどう。ミコトとは」


「うーん、仕事が忙しいのか、会ってない」


「やっぱり…」


「どうして…」


「マサもどこかに行ったのよ。
勝手に出張されて部下たちから苦情がきているのよ」


「そうなの」




伊藤君は『W』の管理部に所属していた。


幹部の一員と扱われている。


そのため、部下を持っている。