時間になり、係員の指示で移動した。


初めはバスに乗り、飛行機、その後、またバスに乗り、『選択の石』へ到着した。


『選択の石』を産まれて初めて、見たが大きいと感じた。


ビル30階はある高さだ。


周りには観光者が『選択の石』に触れないように柵が設置されていた。



係員の指示で私たちは選択の石を半周ほど歩くと、一ヵ所だけ入り口のような場所があった。


入口の扉は半透明で中に夫と伊藤君、山本君、それに知らない男女三人がいた。


係員は誘導し終わると、カードを確認し始めた。


確認し終わった者は扉の中に移動させられた。


全員のカードチェックが終わると、係員は扉を閉めた。


ここから、先は戻ることを許されないのだろう。


伊藤君が私達に近づいた。


アカネが私達の前に出て、伊藤君と向き合うようになった。




「あとは頼んだ」




一言だったが、伊藤君の思いを感じた。


「わかった」アカネも決意したのだろう。


伊藤君の想いを引き受けた。


夫は『選択の石』に触れた。


すぐ横の場所が光り、扉が開くように洞窟が現れた。




「この中を進めば、現実世界だ」




山本君は皆に説明した。




「まず、初めに俺達が先に入る。
数分後に選抜部隊が入ってきてくれ。
順番はどうでもいいが、間隔を空けて、一人ずつだ。
いいな」




皆が頷いた。




「それじゃあ、また後で会おう」




山本君と知らない女性一人が二人同時に中に入って行った。


伊藤君は見知らぬ二人に話しかけていた。


会話は聞きとれないが、最後に握手をして残った二人も洞窟へ入って行った。


私達は四人の様子を見ながら、不安が募らせた。


しばらくして、伊藤君がアカネに指示を出した。


アカネは頷き、洞窟へ入っていく。


次から次へと入っていき、残ったのは私だけだった。




「必ず行くから…アキトと一緒に…」


「うん、待ってる」




私は夫と最後の別れをした。