アカネが基地で動物を抱えていると一人の男性が話しかけた。




「その動物をどうするんですか」




動物の頭を撫でながら話した。




「これから、食べるわ」




当然のように話した。


男は動物の目を見ていた。




「ダメです。
この子は食糧じゃない。
こんなに可愛い動物を食べるなんて…
いくら総長でも許しません」




男の口調から本気のようだ。




「でも、食べないと私達が死ぬわ」




これはグループの皆が理解していることだった。


冷静に考えれば、当たり前のことだ。




「それでも、動物を殺すことは許しません」




男の反対でグループ内の空気が暗くなった。


私は男がどうして反対するのかを考えた。


そして、気付いた。


ミーティングで『生物学』の人だった。




「それなら、あなたは食べなければいい。私達が食べるわ」


「ダメです。私がいる限り、この子を食糧にはさせない」




男は譲らない。





これ以上、話あっても決まらないと考え、この件を保留にして次の部隊が食料調達に向かうと、『生物学』の男は班に残ると言い出した。


順番から、次の調査部隊に行くはずだ。


男は調査に行っている最中に動物が食料として殺されてしまうことを恐れたらしい。


グループの人達は一人のわがままと空腹から不安から苛立ちに変わった。


アカネは一人を特別扱いしないと話したが、男も譲らない。


班の状況から、これ以上の争いは不利益だと考えたのか、アカネとヨシトさんが代わりに部隊に加わった。


男が大事に動物を抱えながら、班に残った。


待っている間、私達は誰も話さなかった。


ただ、動物だけを見ていた。


しばらくして、『生物学』の男がトイレに行くと言いだした。


皆は許可した。グループ内の空気を変えるにはこの男が邪魔だと感じていたためだ。


男は許可が出ると、動物と共にどこかに行ってしまった。


男が離れてから、私たちは話し合った。