演説からから14カ月後


私は訓練施設の入り口にいた。




「それじゃあ、行ってくるね」


目の前には夫とアキトに行った。


「うん…」


夫は寂しそうな声で頷いた。


これから一週間は会うことができない。


まだ、現実世界へ行くわけでもないのにこの入り口に入れば、夫とアキトに会えないような気がして仕方がなかった。




「行きましょう」




私の車いすを『W』の人が押した。


私の周りには『W』の人が三人付いている。


アカネの話では護衛兼世話係のためだと言われた。


この人達は黒いスーツを着ている。


そのため『W』の人だと一般人でもわかるだろう。




「はい」




私が話すと同時に車いすが動いた。


『W』の人は夫に会釈をして、入口の方へ向かった。


私は入口に入ってから、後ろを振り返らなかった。










訓練施設に入り、受付を済ませた。


参加書を渡すと、カードを渡された。


このカードは指定されたエリアにしか入ることができない。


訓練施設では顔認証とカードによるセキュリティー管理をしている。


宿舎や訓練施設、食堂に御手洗いまでがカードなしでは入れない。


言い換えれば、参加者以外が訓練施設に入っても何もできないことを意味していた。


私はカードを受け取り、受付の人からの指示で教室へ向かった。


付き添いがいるため、私は避難口に近い席に座った。


この教室は約千人入る部屋だろう。


けれども、その半数もいない。


訓練が始まる前にガイダンスを行う。


一度ガイダンスを受けた人がこの光景を見たらどう思うのだろう。


今、私がいる教室にいる人達が選抜部隊なのだ。