「この世界の管理者だった人が提供した仮想世界システムの取り扱い説明書よ。
金本とかいう人が書いたものよ。
現実世界へ行った調査部隊の知り合いらしいんだけど、そんなことはどうでもいいの。
ナナミは現実世界へ行ったら、システム管理者の仕事を手伝ってもらうわ」




私は考えた。


システム管理者…


名前だけ聞けば簡単な仕事だと思えた。


でも、この世界を制御しているシステムだ。


ミス一つでこの世界を崩壊させてしまう恐れもあった。




「やるか、やらないかはナナミが決めて…。
でも、この仕事は信頼できる人しか頼めない仕事なの。
それだけはわかってほしい」




私は資料を数分で読んだ。


ある程度は理解した。


内容はわかっても、実際に制御できるかどうかは装置を触らないとわからない。




「以前聞いたナナミの余命から考えても、あと八カ月も生きることは厳しい。
それなら、現実世界へ行き、生きた方がいい」




アカネの気持ちはありがたかった。


でも、夫とアキトを置いて自分だけ現実世界へ行きたくなかった。


家族三人で新たな一歩を踏み出したかった。