アキトが産まれて数日後








私は病室で夫を待っていた。







病院から出ることになるのは何日ぶりなのかと考えてしまう。







この十年、色々なことがあった。








夢のような時間だった。楽しい時、辛い時、苦しい時…









もう、思い残すことはないとさえ思えた。










服を着替え、外出の支度をした。







身の回りをきれいにして、迎えが来るのを待った。





















トントン…










私はドアを見た。








「はい」と言うとドアが開いた。









ドアが開き、現れたのは夫だった。








「ナナミ、そろそろ時間だよ…」






「うん」













私は鞄を持ち、夫の方へ向かった。










「大丈夫。身体の調子はどう…」








「今日は大丈夫。
それにこの日を楽しみにしていたから」










「わかった。鞄持つよ」











そう言うと、夫は私の鞄を持った。















「ありがとう」私は夫に感謝の気持ちを込めて言った。
















「いいんだ。早く行こう。
皆が待っているから…」