重い瞼を持ち上げて薄く目を開くと、真っ白な天井が目に飛び込んできた。



「目ェ覚めたか」



ゆっくり目だけを動かして、声のした方を確認する。


「……?」

「どうした、俺が分からねーのか?今回は本当に記憶喪失しちまったみたいだな」

「小田切……せんせ?」

「なんだ、分かんのか」

「ここは……?私、数学のテスト受けて……それから……あれ?」


小田切先生はそっと私のおでこに手を乗せて、長い息を吐いた。


「ここは保健室だ。テスト中にぶっ倒れて床に頭強打したんだよ、お前。おまけに意識失うもんだから、『結城が死んだ!』ってクラス中大パニックだバカヤロー」

「ありゃりゃ」

「ったく……」


小田切先生は私のおでこに当てた手を、自分のおでこに当てながら小さく溜め息をついた。


「……まだ熱っぽいな」

「先生に触られたから」

「黙れバカ。大体お前なんでこんな高熱出てるくせに学校来てんだよ。休めよ」

「だって休んだら小テストが……小テスト……?あ……小テスト!!!!!」


私は思わずガバッと起き上がって頭を抱えた。


そして泣きそうになった。


だって……小テスト、解いた記憶がないんだもん……。


60点どころか一問も解けてないかもしれない。


あんなに頑張って勉強したのに……。



「おい」

「……分かってますっ」

「?」

「どーせもう口きかないって言うんでしょ。いいもん、別に。体調がどうであれ、約束守れなかった私が悪いんです……だから……」