「先生、ちょっと待っててね!」

「?」


黙々とお粥を頬張っている先生を残して、私は再びキッチンに向かった。そしてまた新たなお盆を持って寝室に戻ると、先生の表情が硬直した。


「おい……なんだそれ?」

「なんだそれって見て分からないんですか?筑前煮としょうが焼きとサバの味噌煮と八宝菜です」

「料理名を訊いてんじゃねーよ。誰がそれを食うんだって訊いてんだ」

「誰がって……先生以外誰がいるんですか?」


お盆に乗っている山盛りの料理を見つめながら、先生は顔をひくつかせた。


「待て待て待て待て。じゃあこの玉子粥はなんだったんだ?」

「前菜です」

「前菜が米っておかしいだろーが!」


空っぽになったお粥の器を下げて、新たなお盆をサイドテーブルに乗せた。


「具合悪そうだったらお粥だけにしようと思ったんですけど、元気そうなんで大丈夫ですね!いっぱい食べてください!病気の時こそ栄養つけなくちゃ!今、普通のごはんよそってきます!」

「おい!」


そして結局、あんなにたくさんあった料理も、山のようによそったごはんも、残りのお粥も全部全部、先生は残さず食べてくれた。