――「おはよー!」

「あっ、おはようー」


他人の元気な朝のあいさつが

昇降口に響いていた。


私は久しぶりに

何にも足を止められずに

靴を履き替え教室に向かった。


……わかってる。

昨日、桃井稜佑と気まずいまま別れたこと。


朝のあいさつなんて

今まで誰ともしてなかったし、

アイツなんてウザかったこと。


なのに、なんで、、


なんでこんなに物足りないんだろう。



教室に入ると彼はまだ来ていなくて、

いつもHRまで暇つぶしに読む本の内容が

今日は全く頭に入ってこなかった。


始礼のチャイムと同時、

ギリギリに登校してきた彼は

いつもと何ら変わった様子はなくて

改めて自分の存在価値の無さを実感した。