訓練場。

訓練分隊の新兵達が、自主訓練をしている。

が、その訓練には身が入っていない様子だ。

「大丈夫かな、時雨教官」

皓が腹筋をしながら言う。

「大丈夫な訳ないだろ、腹と胸を貫通していたんだぞ?即死しないだけでも奇跡に近いってのに」

隣で同じく腹筋をしていた晴がまくし立てた。

「だけど軍医の話だと、順調に回復中だって言ってたよ」

腑に落ちない顔をしているのはラルフ。

そう、『順調に回復中』なのだ。

任務から帰還して、まだ一日しか経っていない。

普通なら絶対安静の重傷だ。

なのに時雨は何故一般病棟で療養する程度で済むのか。

「『不死身の時雨』…教官の異名だったよな」

腕立て伏せをしながら綾斗が呟いた。

不死身。

死なないという意味なのは皆知っている。

だからといって、その異名を持つ者が本当に不死身だとは思わない。

幾多の修羅場を潜り抜けてきたとか、戦場を幾つも生き残ってきたとか、そういう武勇を例えて『不死身』と呼ぶのだと。

これまで彼らは、何の疑いもなくそう思っていた。