「・・・すぅっ」
夜の病院。当直室のドアの前で、息をすいこむ。
両手で抱えるカバンの中には、今日教えてもらう予定の、数学の宿題ノート。
そのノートには、『2年A組 月野美景』の名前。
でも、『2年A組』なんて、いらない。
かわりに、肩書きをつけてしまいたい。
「し、しつれいします!!」
ーー"柊先生の彼女"、月野美景って。
「・・・ん、いらっしゃい」
ガラッと、ドアを開けた先。
座っているイスをくるっと回転させて、柊先生が、わたしを迎えてくれた。
机にはもう、ちゃんとカップがふたつ、用意されていて。
・・・わたしが来るの、待っててくれたんだ。
ホッとするのと、うれしいのが、同時にくる。