わざわざ、たまに話しかけても、などと口にするとは、

テニス部を辞めた山崎、
何となく話し辛いところがあるのだろう。

第一、テニス部員の目もある。



「もちろんさ。
スクールでどんな練習をしたか、
いろいろ話してくれよ。

部活しか知らない僕には役に立つかも知れない。」



と、とても仲良しの相手に話しているようなリュウの言葉だ。



「良いのか。
実は… 月曜から学校へ行きにくいなあ、
とちょっと思ったりしていたんだ。

自分なりにしっかり考えて決めたことだけど… 

それほど友達と呼べるような奴はいなかったけど、

やはり皆から無視されたら悲しいからな。」


「そうなのか。
僕はそんな事しないさ。

いつだって来る者拒まずだ。」



まともな顔をしてそんな言葉を出すリュウを見て、

山崎はちょっと戸惑いの表情をしたが、

すぐに気を取り戻し、爽やかな笑みで見送った。




そしてまた原宿界隈をぶらぶらしているリュウ。

これと言うあてがあるわけではないが、

行き交う人たち、
特に明らかに中学生らしき若者が、

派手な格好をして大きな声で話し、

笑っているのを見るのが珍しい。

そう、スマートに言うならば、

さりげなく、ヒューマン・ウォッチングをするのが面白かった。

相変わらず、時々声を掛けられるが、
そんな時は睨み返すだけ。

自分の楽しみを邪魔するな、という態度を出す。



「こら、リュウ、
あれだけ言ったのに、
こんなところをふらついて、

お前は何をしたいんだ。」



いきなり背後から大きな声が飛び込んで来た。



「先輩… こんな所まで配達ですか。」



水嶋が何も持っていないのは分かったが、

リュウはそんな言葉を出した。



「僕、ここ初めてだから、
ちょっと見ていただけです。」



と、澄ました様子で応じたリュウだ。