「え?」

 コーヒーを傾けていた視線を上げる。

「お前から父を奪った私を憎む事も出来るのだぞ」

「! そんなコト……っ」

 声を詰まらせる彼女を見つめて続ける。

「お前はそうしなかった。それが返ってお前の重荷になるのなら、それは私の望むものではない」

「……っ憎まれてもいいって言うの?」

「人が前に進む力はそれぞれだ」

「そんなコト……出来るワケ無いじゃない。好きなんだから」

「それは恋や愛ではないよ」

「あたしは本気なのに! 父さんばかりについていく子どもじゃない! あたしはもう大人なのよ!」

 ソフィアはそう言って紙コップを投げ捨てて抱きついた。

「好き……」

「……」

 無言の時間が続く──何も応えない彼に顔を近づけた。